プレスリリース
【 2023年 】
10月27日(金)「冠動脈疾患患者において がんと心房細動の既往歴は予後不良と関連する」をプレスリリースしました。
東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、後岡広太郎准教授らの研究グループは、東北大学が主催する第二次東北慢性心不全登録研究(注3)に登録された冠動脈疾患患者のデータを解析し、がんの既往や心房細動合併と、冠動脈疾患の予後との関連を評価しました。その結果、がんの既往があり心房細動を合併する冠動脈疾患患者では、経年的に抗凝固薬(注4)の処方率が上昇しており、抗凝固治療が適切に行われていることが示されました。一方、がんの既往と心房細動を合併する冠動脈疾患患者は、脳卒中、血栓症、出血や、がんに関連した死亡、心不全で入院するリスクが高いことと関連していました。
本研究成果より、がんの既往があり心房細動を合併する冠動脈疾患患者の診療においては、特に注意深く経過を見ていく必要があることが示唆されました。
本研究成果は2023年10月11日に、International Journal of Cardiology Heart and Vasculature誌にオンライン掲載されました。
【用語説明】
注1.冠動脈疾患:心臓の心筋に十分な血液が供給されないために起こる病気で、心筋に血液を供給する冠状動脈の血流が悪くなることによって生じる。
注2.心房細動:脈が不規則になる不整脈という病気の1つで、心房が細かく動いてけいれんしている状態。
注3.第二次東北慢性心不全登録研究(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2, CHART-2):東北大学循環器内科が実施中の心不全患者の予後に関する多施設前向き観察研究。2006年から2010年まで、のべ10,219人の患者登録を行い、2021年まで追跡調査が行われた国内最大の慢性心不全の疫学研究。
注4. 抗凝固薬:血液を固まらせないようにする医薬品。
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10月16日(月)「一酸化窒素吸入負荷試験から心不全の予後と治療反応を予測」をプレスリリースしました。
東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、矢尾板信裕院内講師、佐藤大樹助教らの研究グループは、心不全に対するNO負荷試験の有用性に着目し、東北大学病院でカテーテル検査を受けたGroup2 PH心不全症例のデータを後ろ向きに解析しました。その結果、NO負荷試験で心臓の負担を示す肺動脈楔入圧(注3)の上昇がみられた症例では、心不全再入院率が高く、予後が悪いことを明らかにしました。今後、心不全に対する新たな治療戦略につながることが期待されます。
本研究は2023年9月29日に心不全研究の専門誌ESC heart failure誌にオンライン掲載されました。
【用語説明】
注1.肺高血圧分類2群(Group2 PH):肺血管の機能障害を伴った心不全。
注2.一酸化窒素吸入負荷試験(NO吸入負荷試験):一酸化窒素 NOはNitric oxideの略称です。心血管系において長く研究される血管拡張に関する重要な因子です。
注3.肺動脈楔入圧:カテーテル検査で評価する指標の一つで左房圧を反映します。
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10月11日(水)「胸部レントゲン写真の経時変化から心不全の危険を予測」をプレスリリースしました。
東北大学大学院医学系研究科循環器内科学分野の安田聡教授、後岡広太郎准教授らの研究グループは、NECソリューションイノベータ株式会社(本社:東京都江東区新木場、代表取締役 執行役員社長 石井 力、以下 NECソリューションイノベータ)と共同で、東北大学が主催する第二次東北慢性心不全登録研究(注3)に登録された心不全ステージB(注1)の患者のデータを解析し、心胸比の経時的な変化を評価しました。その結果、登録時CTR>53%かつ、年間のCTRが0.5%ずつ上昇する(心陰影が拡大していく)患者は、心不全を発症する危険が高いことを明らかにしました。
本研究成果より、胸部レントゲン写真での簡易な測定項目であるCTRの経時変化を調べることで、心不全発症の予測が可能であることが示唆されました。今後新たな診断・治療戦略に繋がることが期待されます。
本研究成果は2023年9月17日に、International Journal of Cardiology Heart and Vasculature誌にオンライン掲載されました。
【用語説明】
注1.心不全:心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、生命を縮める進行性の病気。心不全ステージ分類を用いることで適切な治療を適切なタイミングで行うことを目的とする。日本循環器学会/日本心不全学会合同の急性・慢性心不全診療ガイドラインではリスク因子をもつが器質的心疾患がなく、心不全症候のない患者を「ステージA:器質的心疾患のないリスクステージ」、器質的心疾患を有するが心不全症候のない患者を「ステージ B:器質的心疾患のあるリスクステージ」、器質的心疾患を有し、心不全症候を有する患者を既往も含め「ステージ C:心不全ステージ」、さらに「ステージ D:治療抵抗性心不全ステージ」と定義する。
注2.CTR(心胸比):肺の幅に対する心臓の幅の割合。
注3.第二次東北慢性心不全登録研究(Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2, CHART-2):東北大学循環器内科が実施中の心不全患者の予後に関する多施設前向き観察研究。2006年から2010年まで、のべ10,219人の患者登録を行い、2021年まで追跡調査が行われた国内最大の慢性心不全の疫学研究。
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【 2022年 】
10月5日(水)「コロナ禍でも救急医療体制は最低限維持されていた - 新型コロナウィルス感染症緊急事態宣言下での急性心筋梗塞救急医療 -」をプレスリリースしました。
本研究は、研究成果は2022年9月16日に、IJC heart and vasculature誌にオンライン掲載されました。
注1.冠動脈カテーテル治療:心臓カテーテル検査で冠動脈に造影剤を注入して血管の狭窄度を評価した後に、閉塞した血管を認める場合に治療へ移行する。閉塞部位の血栓吸引やバルーンでの拡張後に、ステントと呼ばれる金属の網状の筒を用いて狭窄部位を確実に広げて血流を改善させる場合が多い。
注2.来院から閉塞血管の血流回復までに要した時間(Door-to-device time):患者が病院へ到着(door)して急性心筋梗塞と診断された後に、緊急で準備を行って心臓カテ-テル検査で閉塞した冠動脈を同定して、医療器具(device)を用いて血栓吸引やバルーンでの拡張を行い、血流を回復させるまでに要した時間のこと。
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5月17日(火)、「心不全におけるがん既往と心房細動の関連を解明 -がん既往歴があり心房細動を合併した心不全では血栓症と出血リスクが高い-」をプレスリリースしました。
東北大学大学院医学系研究科の安田聡教授・後岡広太郎准教授らの研究グループは、東北大学が主催する第二次東北慢性心不全登録研究※に登録された心不全患者データを解析することにより、3者が合併した場合の予後への影響について、以下の重要な知見を得ました。(1)がん既往歴のある心不全症例が心房細動を合併した場合、脳卒中・全身塞栓症・出血リスクが高い、(2)がん既往歴があり心房細動を合併した心不全症例の約4割が、塞栓症への適切な抗凝固(血栓予防)療法を受けていない可能性があります。
本研究成果は、心不全症例における、がんと心房細動の関わりについての医学的な意義を世界で初めて明らかにしたものです。本研究は、今後新たな治療戦略に繋がることが期待されます。
本研究成果は2022年4月17日(英国時間)に、欧州心臓病学会の学会誌であるESC Heart Failure誌にオンライン掲載されました。
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第二次東北慢性心不全登録研究(CHART-2研究:Chronic Heart Failure Analysis and Registry in the Tohoku District-2):東北大学循環器内科が実施中の心不全患者の治療経過に関する多施設前向き観察研究。2006年から2010年まで、のべ10,219人の患者登録を行い、2021年まで追跡調査が行われた国内最大の慢性心不全の疫学研究である。
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4月22日(木)、「厳格なLDLコレステロール管理療法の冠動脈プラーク安定化作用が糖尿病患者では減弱している可能性」をプレスリリースしました。
この研究結果は、アメリカ心臓病学会英文機関誌「Journal of American College of Cardiology: Cardiovascular Imaging」オンライン版に、2022年4月14日に掲載されました。

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3月17日(木)、AFIRE研究のサブ解析結果「抗凝固療法では腎機能や、投薬開始からの時間の経過によって出血リスクが変化する」をプレスリリースしました。
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当解析により、腎機能の状態次第で出血イベント発生リスクの差に違いがあることがわかりました。腎機能が低下している場合の抗凝固薬による出血イベント発生リスクは、繰り返す出血を考慮した場合の解析では、腎機能の状態による出血リスクの差がさらに大きくなると推定されることが示されました。また、抗凝固薬による出血のリスクは、腎機能が保たれている症例では時間の経過とともに下がっていきますが、腎機能低下例では出血リスクは高いまま持続することが確認されました。
本研究論文はオンラインジャーナルである「BMC Medicine」に、2022年2月25日に掲載されました。
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【 2021年 】
9月14日(火)、「冠動脈攣縮に対する世界初の超音波治療の開発 -リンパ管新生を介した抗炎症作用の関与-」 と題してプレスリリースを行いました。
本研究成果は、2021年9月13日午後2時(現地時間、日本時間9月14日午前4時)にPLOSONE誌(電子版)にオンライン掲載されました。
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9月6日(月)当科の研究成果「冠動脈疾患治療における新たなエビデンス -抗血栓療法は出血させないことが重要!-」をプレスリリースしました。
AFIRE研究は、本邦の294施設が参加して行われた心房細動を合併した安定冠動脈疾患患者のランダム化比較試験で、登録総数2,240例中、熊本大学からは29例が登録されました。今回の研究では、約2年間の観察期間中の脳心血管イベント(脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建術を必要とする不安定狭心症、総死亡の複合エンドポイント(評価項目))と、出血性イベント(ISTH(国際血栓止血学会)基準による重大な出血性合併症)が検討され、重大な出血性イベントの発生がその後の脳心血管イベント発症の引き金になることが明らかになりました。
本研究論文は、循環器領域のトップジャーナルであるCirculationの姉妹誌「Circulation: Cardiovascular Interventions」オンライン版に米国東部標準時の2021年9月3日午前5時(日本時間9月3日午後6時)に掲載されました。
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5月27日(木)当科の研究成果「不明な点が多かった微小血管狭心症の実態を明らかに -世界初の7ヶ国参加大規模国際共同研究からの知見-」をプレスリリースしました。
当科の下川宏明客員教授らの研究グループは、国際診断基準により微小血管狭心症と正確に診断された患者を世界7ヵ国14施設から合計686名登録し、その臨床像や長期予後について調査しました。その結果、これまで主に女性の病気と考えられていた微小血管狭心症が男性にも認められること(男女比=約1:2)、年間の心血管イベントの発生率が約7.7%と決して良性の疾患ではないこと(予後に性差なし)、女性患者は、男性患者に比し、症状による生活の質(quality of life, QOL)の低下が顕著であること、欧米人患者はアジア人患者に比し心血管イベントの発生率が高率であるが危険因子等で補正すると人種差が消失することなどが明らかになりました。
本研究は、診断方法や予後予測因子が未だ確立されていない微小血管狭心症の臨床像、長期予後を国際共同研究で初めて明らかにした重要な報告であり、予後不良群の層別化や新たな治療法の開発などへつながることが期待されます。
本研究成果は、2021年5月27日午前5時(現地時間、日本時間5月27日午後1時)European Heart Journal誌(電子版)にオンライン掲載されました。また、ヨーロッパ心臓病学会は、本研究結果の重要性に鑑み、異例なことですが、学会自身がプレスリリースを行いました。
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3月3日(水)当科の研究成果(超音波治療による血管-神経新生作用を発見 ―脳梗塞後の神経機能回復のための新しい治療法へ期待―)をプレスリリースしました。
本研究成果は、2021年3月2日午前10時(現地時間、日本時間3月2日午後7時)Scientific Reports誌(電子版)にオンライン掲載されました。
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