音波治療

低出力パルス波超音波(LIPUS)を用いた低侵襲治療の開発

 当科では、低出力パルス波超音波(low-intensity pulsed ultrasound:LIPUS)を用いた新しい血管新生療法の開発を行っています。虚血性心臓病は、その治療として薬物療法・カテーテル治療・バイパス手術が行われてきましたが、近年これらの治療法だけでは十分な効果が得られない、あるいは適応困難な重症例が増えてきています。当科では、低出力パルス波超音波の血管新生効果に着目し、これを臨床に応用する試みを進めてきました。超音波治療装置は、一つのプローブで診断と治療の両方が可能であること、組織を損傷する可能性が少ないこと、診断用装置がすでに世界中に普及していることなどから、その有効性が確認できれば汎用性は極めて高いものと考えられます。


 当科では、ある特定の条件を持った低出力のパルス波超音波が、血管内皮細胞における メカノトランスダクション機構を介して、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現を亢進させ、その組織血流を改善させることを種々の動物モデルと培養細胞実験で明らかにしてきました(図1)。これらの基礎的検討をもとに、大学倫理委員会の承認を得て、2013年12月から重症狭心症患者を対象に、東北大学病院を含む全国10施設(図2)で医師主導治験を開始し、2019年7月に新規症例登録が終了しました。今後、データ解析の結果が待たれます。


 さらに、最近実施された基礎研究の結果、低出力パルス波超音波が脳血管性認知症やアルツハイマー型認知症の動物モデルにおいて、その認知機能の低下を抑制するという知見が得られました(図3)。この結果を受け、当科では2018年6月から軽度アルツハイマー型認知症患者を対象として、低出力パルス波超音波の認知機能低下に対する有効性を評価する医師主導治験を開始しました。現在、症例登録が終了し観察期間に移行しています。


図1:LIPUS治療の作用機序仮説

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図2:狭心症に対する超音波治療治験の実施体制

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図3:認知症に対する超音波治療の作用機序仮説

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[ お問い合わせ先 ]

※東北大学病院循環器内科における「認知症の方のための超音波治療」の治験は終了しております。
詳細等は サウンドウェーブイノベーション株式会社 までお問い合わせください。
サウンドウェーブイノベーション株式会社HP:https://sw-innovation.com/