冠攣縮性狭心症
冠攣縮は安定、不安定狭心症のみならず急性心筋梗塞や致死性不整脈、心臓突然死など虚血性心疾患全般の発症に重要な役割を果たしている病態です。当科には長年、冠攣縮研究会の事務局が置かれ、これまでに冠攣縮の疫学や長期予後、治療法について日本全国規模の臨床試験をリードしてきました。また冠攣縮の分子機序としてRho-kinaseの活性化が深く関与していることを明らかにし、通常の治療薬では改善が得られない難治性冠攣縮に対するRho-kinase阻害薬ファスジルの医師主導型治験を行うなど新規治療法への試みも行っています。
冠微小血管障害
心筋虚血のメカニズムとして、①冠動脈の動脈硬化、②冠攣縮に加えて、微小血管狭心症をはじめとする③冠微小血管障害が第3の機序として近年注目されています。冠微小血管は通常の心臓カテーテル検査(冠動脈造影)では直接見ることができず、これまで診断方法や治療に定まったものはありませんでした。当科では冠微小血管障害の基礎・臨床研究を積極的に推進するとともに、海外の研究者と協力して微小血管狭心症の国際診断基準を作成しました。さらに、国際レジストリー研究を主導し、最近微小血管狭心症患者の臨床像や長期予後を明らかにしました。(冠動脈機能異常に関する国際共同研究組織;Coronary Vasomotor Disorder Study Group Summit, COVADIS)* 今後も微小血管障害の病態解明や有効な治療法の開発を目指して臨床試験を行っていく予定です。
AMED研究:非閉塞性冠動脈疾患患者における冠動脈機能の性差に関する研究開発
狭心症患者の半数は有意な器質的冠動脈狭窄が認められない非閉塞性冠動脈疾患(INOCA)です。INOCAは、特に閉経後の女性に多く、治療抵抗性を示し、不安感の増大や活動性の低下・生活の質の低下の原因となります。これまでの研究でINOCAは冠動脈の痙攣(冠攣縮)や微小血管の機能不全(冠微小血管障害)などの冠動脈機能異常によって引き起こされ、血管保護作用を有する女性ホルモン・エストロゲンの血中濃度減少との関連性が指摘されています。我々は日本医療研究開発機構(AMED)から研究費を獲得し、INOCA患者における冠動脈機能異常の性差を検討し、女性INOCA患者の病態解明を目的とする研究を行っております。