肺高血圧症

当科における肺高血圧症の基礎研究

 肺高血圧症は従来の肺血管拡張薬が一定の成果を見せているものの、内科的根治療法のない致死性疾患であり新規治療法の探索が急務です。東北大学病院は肺高血圧症・心肺移植施設としての実績を有し、基礎・臨床の両面から研究を行っております。

 当科では、肺高血圧症臨床分類の第1群から第5群すべての肺高血圧症患者の臨床に携わっております。特に第1群である肺動脈性肺高血圧症患者でみられる肺動脈のリモデリング、また第4群であります慢性血栓閉塞性肺高血圧症患者でみられる器質化血栓は、未解明な点が多く当科の研究対象となっております。当院での豊富な臨床実績の中で得られる心臓、肺(肺動脈平滑筋細胞や内皮細胞)、血液検体を多角的に解析することで、新規治療標的となる遺伝子、蛋白質の発見に取り組んでおります。更に、培養細胞実験、遺伝子改変マウス、また新規動物モデルの開発によって分子生物学的な観点から肺高血圧症の病態解明を目指しています。(図1)

ph_b_1


 また、東北大学薬学部と連携し、薬剤ライブラリー(東北大学 5562種類, 東京大学4452種類)とマルチウェル自動分注機を用いたハイスループット・スクリーニングを行うことにより、肺高血圧症患者にみられる肺動脈平滑筋細胞の異常増殖を抑制する薬剤を発見(創薬)するなど、革新的な方法で肺高血圧症の新規治療法の確立にアプローチしております。(図2)

ph_b_2