心臓移植/補助人工心臓(VAD:Ventricular Assist Device)

 当科では、日本で11施設ある心臓移植施設の一つとして、心臓血管外科の協力の下、重症心不全に対し心臓移植/補助人工心臓 (VAD:Ventricular Assist Device)による治療を行っています。ここでは、(1) 心臓移植を前提とした補助人工心臓(VAD)の適応となる重症心不全、そして(2) 心臓移植を行った患者さんの対応について、その概要を説明いたします。


(1) 心臓移植を前提とした補助人工心臓(VAD)の適応となる重症心不全とは、INTERMACS/J-MACS分類で主にプロファイル2–3の症例が主な対象となりますが、4–7の場合でも致死性不整脈・それに伴う植込型除細動器の適正作動を繰り返す症例も対象となる場合があります。(図1) 更に、図2に示す心臓移植の適応条件に当てはまり、かつ除外条件に当てはまらない方を対象としています。

 VAD植込・心臓移植・その後について医師・移植コーディネーターからご本人・ご家族に対して説明・確認を行います。当科に入院後、適応・除外条件に関して改めて各種検査を行った上で心臓移植・VAD植込の可否について院内移植検討委員会で十分議論し、日本循環器学会の承認を得た上で、当院心臓血管外科によりVAD植込を行っています。VAD植込を行った後、外来に定期通院しながら心臓移植を行うまで待機するようになります。

図1. INTERMACS/J-MACS分類と補助人工心臓の選択(参考文献1より改変)

vad1

図2. 心臓移植の適応・除外条件(参考文献2より改変)

vad2

(2) 心臓移植を行った患者さんに対しては、心臓血管外科と連携の上、当科での入院・外来フォローアップを行っております。移植後は免疫抑制薬の内服を行いますが、注意すべき合併症として、免疫抑制に伴う感染症に加え、移植1年(特に3ヶ月以内)までは心筋の拒絶反応が、1年を過ぎた後には冠動脈(心臓の栄養血管)の病変(Cardiac Allograft Vasculopathy: CAV)が挙げられるため、定期的に心筋生検・冠動脈精査といった入院検査を行います。


 心臓移植/補助人工心臓 (VAD)に関するお問い合わせにつきましては、ご遠慮なく当科までお願いいたします。


参考文献

  1.  JCS/JSCVS/JATS/JSVS. 「重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン」2021年改訂版.
     https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2021/03/JCS2021_Ono_Yamaguchi.pdf
  2.  日本循環器学会. 「心臓移植に関する提言」 2016年版.
     https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2016_isobe_h.pdf