TAVI (Transcatheter Aortic Valve Implantation)

TAVIとは

TAVI(タビ)とはTranscatheter Aortic Valve Implantationの略語であり日本語では経カテーテル大動脈弁留置術と訳され、重症大動脈弁狭窄症に対するカテーテルを用いた治療法です。従来の開胸・開心術と比較し、低侵襲な治療法であり、術後の回復も早い点が特徴です。この方法により、これまでは手術が困難であった高齢の患者様や複数の疾患を有しており手術がハイリスクである患者様なども治療が可能となりました。

TAVIの方法

カテーテルは直径5mm程度の細さで、カテーテルを体内に挿入し始める部位により①経大腿動脈アプローチ、②経心尖アプローチ、③経鎖骨下動脈アプローチ、④直接大動脈アプローチ、に分けられます。最も一般的な方法は①であり、9割以上の手術がこのアプローチで施行されています。当施設では全身麻酔下に手術を行っておりますが、局所麻酔で行う場合もあります。

【参考動画】(外部リンク:YouTube)
・バルーン拡張型弁の留置方法   https://www.youtube.com/watch?v=OjpE96jEEN8
・自己拡張型弁の留置方法    https://youtu.be/3_fRI-UgLb0

大動脈弁狭窄症とは

大動脈弁狭窄症とは心臓の出口にある大動脈弁という扉が硬くなり開きづらくなることにより、心臓が全身に血液を送りづらくなり、様々な症状を引き起こす病気です。初期には症状はなく、聴診で特徴的な心雑音が聴取されます。原因は様々ですが、現在では加齢によるものが最も多くなっています。65歳以上の罹患率は2-4%と言われており、日本における潜在患者数は70-140万人と推定されています。

大動脈弁狭窄症の症状は

大動脈弁狭窄症が進行すると、狭心症(胸部の重苦しさ、締め付けられるかんじ)、失神、心不全(息切れ、易疲労感、浮腫など)の症状が出現し、治療を行わないと予後不良となります。高齢になると体力の低下、膝や腰の痛みなどにより症状が出にくい場合もあります。また症状を自覚していても年齢や運動不足の影響と判断してしまう方も多くみられます。

重症度の診断

最も汎用されているものは超音波検査で大動脈弁の通過血流速度が4 m/秒を越え、左心室と大動脈の平均圧格差が40 mmHg以上、大動脈弁口面積が1.0 cm2を下回ると重症と定義されます。さらに進行した「超」重症大動脈弁狭窄症は上記それぞれが5 m/秒を越え、平均圧格差が60 mmHg以上、弁口面積が0.6 cm2を下回り、無症状であっても予後が不良です。また心筋の収縮力が低下したり、心筋の肥大により1回拍出量が低下してきたりすると、弁口面積が狭くなっても血流速度や圧格差が重症の定義を満たすことができない低流量低圧格差重症大動脈弁狭窄症である場合もあり、注意が必要です。

治療方法の選択

当施設では超音波検査や心臓カテーテル検査などを行い大動脈弁狭窄症の重症度の診断を行っております。重症に満たない方々でも進行性の病気であるため定期的に超音波検査で経過を追い、手術の至適なタイミングを検討いたします。手術適応についてはハートチームで決定しております。また外科的手術あるいはTAVIのいずれが望ましいかは、患者様一人一人の状態などにあわせて協議し決定しております。

・ハートチーム
循環器内科医師、心臓血管外科医師、麻酔科医師、放射線技師、臨床工学士、手術室看護師などと多職種間で情報を共有し、手術を安全に行えるようにしています。

当院の特徴

当施設では2014年から導入し、年々件数は増加してきています(図)。また日本経カテーテル心臓弁治療学会の指導医(1名)も所属しており、2020年12月末時点で計195件の手術を施行していますが周術期死亡率は0%と良好な成績を得られております。手術後には自宅での生活がスムーズに行えるよう、リハビリを十分に行ってから退院いただいております。必要であれば自宅近くの連携病院で引き続きリハビリを継続いただくことも可能です。また、栄養士や薬剤師も介入し、栄養面でのサポートや薬の飲み方などの指導を行っております。さらに、人工弁への感染予防目的に口腔内の衛生面についても歯科治療や通院など行っていただいております。このように多職種にわたり一人一人の患者様の治療にあたっております。退院後はかかりつけの医院あるいは病院に通院いただきながら、かかりつけ医と連携し当院でも定期的に診察を行っています。


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