循環補助用心内留置型ポンプカテーテル IMPELLA®

IMPELLA®とは

 循環補助用心内留置型ポンプカテーテル IMPELLA®(インペラ)は、心原性ショックなど薬物療法抵抗性の急性心不全に対して、経皮的に左室内へ挿入・留置し、左室内から直接脱血して上行大動脈へ順行性に送血することで体循環を補助することが可能な新しい機械的補助循環装置 (mechanical circulatory support: MCS)です 。(図1・2) 本邦では2016年9月に薬事承認、2017年9月に保険償還されて使用可能になりました。従来から用いられてきた大動脈内バルーンパンピング(intra-aortic balloon pump: IABP)に代わり得る低侵襲かつ迅速に導入可能な経皮的補助循環装置として期待されています。


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IMPELLA®の特徴

 2021年5月現在、最大補助流量に応じて3種類のデバイスの使い分けが可能です。(図3) IMPELLA®2.5およびIMPELLA®CP(Cardiac Power)は経皮的な直接穿刺法で挿入可能で、各々最大流量2.5および3.7 L/minまでの補助が可能です。IMPELLA®5.0は挿入に外科的なカットダウンを要しますが、最大流量5.0 L/minまでの補助を実現します。IMPELLA®の際立った特徴として、経皮的な圧・容量負荷軽減(unloading)による心筋サルベージ効果が提唱されており、単に急性心不全・心原性ショックの生存率改善のみならず、心機能改善を図れる病態(急性心筋梗塞や劇症型心筋炎など)での有効性が特に期待されています。動物実験による基礎研究では、左室の直接的な負荷軽減効果と順行性の体血流量増加作用に加えて、急性心筋梗塞モデルにおける梗塞巣の縮小効果や慢性期の左室駆出率改善効果などが示されてきました。さらに、経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support: PCPSまたはveno-arterial extracorporeal membrane oxygenation: VA-ECMO)との併用療法であるECPELLA(VA-ECMO + IMPELLA®)などの応用的な治療法も登場しています。


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当院の特徴

 当院では2018年度より使用可能になり、手技等に関する十分な知識・経験を有した多職種ハートチームによってIMPELLA®治療を実施しています。当院ではこれまでに、劇症型心筋炎、急性心筋梗塞、拡張型心筋症、心室頻拍ストームなどの難治性の心原性ショックに対して使用してきました。約7割は経皮的心肺補助装置 (percutaneous cardiopulmonary support: PCPSまたはveno-arterial extracorporeal membrane oxygenation: VA-ECMO)の併用を要した超重症例でしたが、全例で血行動態の改善効果を認めました。また、当院は心臓移植を含め移植可能な全臓器移植の認定実施施設であり、心臓血管外科と連携して、植込型補助人工心臓への橋渡し治療にもIMPELLA®を応用しています。