⑤肺高血圧症

肺高血圧症とは

心臓から肺へ血液を運ぶ肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。詳しい原因が不明の難病特定疾患です。平均肺動脈圧が25mmHg以上となると「肺高血圧症」と診断されます。
以前は診断がついてからの生存期間は平均2~3年と非常に重い病気でしたが、現在、さまざまな薬により症状や予後が改善されるようになってきています。

肺高血圧症の症状

肺高血圧症では、全身に十分な酸素を含んだ血液を送ることができなくなり、軽い動作だけで息切れ、疲れ、立ちくらみなどの症状が起きます。さらにこの状態が続くと、肺に血液を送り出す心臓の部屋(右心室)への負担が大きくなり、徐々に心臓の動きが悪くなり、「右心不全」という状態を示します。右心不全となると、顔や足のむくみ、食欲不振、疲労感などがひどくなります。

肺高血圧症の検査

胸部レントゲン、心電図、心臓超音波検査などの一般的検査をまず行います。このほか、特殊な血液写真を行うことがあります。最終的な診断のために、心臓カテーテル検査を行い、肺動脈の血圧を直接測り、重症度を調べます。

肺高血圧症の治療

比較的軽症の場合、治療の主体はカルシウム拮抗薬、ベラプロスト(ケアロードLA, ベラサスLA®)、シルデナフィル(レバチオ®)、タダラフィル(アドシルカ®)、ボセンタン(トラクリア®)、アンブリセンタン(ヴォリブリス®)という血管を広げる薬と抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)の内服で治療を開始します。症状が重い場合、プロスタサイクリン(フローラン®)の点滴治療を行います。最近では、他の肺血管作動物質も開発されてきており、様々な薬剤が開発されつつあります。一方で、このような薬物治療が十分に効かない場合、肺移植手術を行います。当院は国内で肺移植手術を行うことができる数少ない施設の一つです。東北地方や関東地方を中心に、東日本各地から多くの患者さんが受診されています。