心房細動のアブレーション

 心房細動は、最も頻度の多い不整脈でありますが、洞調律化およびその維持は、症状および血行動態の改善はもとより、血栓塞栓症予防の面においてきわめて重要であります。薬物療法の有効性には限界があり、最近では、カテーテルアブレーション治療が発展を遂げています。多くの発作性心房細動の起始において肺静脈を起源とする孤立性、反復性の心房期外収縮がトリガーとなることが1998年に報告され、本起源への巣状アブレーションによる発作性心房細動の根治が可能となりました。しかし、局所異常興奮の誘発が困難な症例や複数起源を有する症例もあり、現在では肺静脈開口部への電気的隔離法が主流となりつつあります。この電気的隔離法には、4本の肺静脈の入口部を各々隔離する方法や、心房筋を含め広範囲に同側肺静脈を隔離する方法があります。我々は、後者の広範囲同側肺静脈電気的隔離術を施行しており、特に、本法は、肺静脈開口部起源を含めた左房後壁起源興奮を除去でき肺静脈狭窄の発生予防を期待できるのが特徴であります。 図1中央は、MDCTにより心臓後面から見た左房と肺静脈を表し、それぞれ左右上下肺静脈の開口部(2箇所の小円)とその周りを囲むアブレーションの通電ライン(点線)をendoscopicviewにて表しています。経中隔アプローチにて左上下肺静脈の開口部に2本のリング状電極カテーテルを挿入し、同様にアブレーションカテーテルを左房に挿入し通電を行います(図2)。エンドポイントは左右肺静脈電位の消失であり、肺静脈が左房から電気的隔離されたことを表します。(図3)。このアブレーション治療により、今まで抗不整脈薬だけではコントロール困難な心房細動症例もコントロールが可能となってきました。


広範囲同側肺静脈電気的隔離 -左房後面像と左右肺静脈入口部像-

心房細動アブレーション