心血管病

心不全グループ主任: 高濱 博幸

 心血管病は、高血圧・高脂血症などの危険因子の出現に始まり、動脈硬化症の合併を経て、心不全に至り、死を迎える経路をたどる。動脈硬化症は心筋梗塞、狭心症、脳梗塞といった虚血性疾患の原因となるだけでなく、血管機能低下を来たし慢性心不全における血行動態破綻の一因となるため、その治療が心血管死の予防となり得る。 我々はこれまで動脈硬化と炎症に関する基礎・臨床研究を行ってきており(Circulation 1997・2001, JACC 2003など)、動脈硬化症に対する治療戦略としては、量的改善のみならず質的改善が重要であると考えている。その質的改善には血管内皮機能の改善および粥状動脈硬化症におけるプラークの安定化が重要であり、抗炎症・マクロファージの活性化抑制・コラーゲン代謝の改善が重要な役割を果たすことを明らかにし(Circulation 2001・2004)、血管攣縮などの血管機能低下にはRhoキナーゼ経路が関与していることを明らかにしてきた(ATVB 2004, J Cardivasc Pharmacol 2004・2007など)。 慢性心不全には高血圧・高脂血症・糖尿病といった危険因子が慢性心不全発症に大きく関与していることが明らかとなっているが、メタボリック症候群の役割は未だ明らかではない。現在、全国多施設において慢性心不全におけるメタボリック症候群の役割を前向きに検討している(厚生労働科研採択研究)。また慢性心不全の約3割に中枢型睡眠時無呼吸を認め、酸素療法が有効であることも示している。 急性心不全はあらゆる心臓病の末期症状として発症する。急性心不全の治療としては血管拡張薬・利尿薬が中心となることが多く、必要に応じ挿管・強心薬・メカニカルサポートにて加療する。その際、臓器保護を念頭に加療を行うべきであり、腎機能が独立したその予後規定因子であることから、多施設研究で、心不全急性期の腎機能に焦点を当てた臨床研究を行っている。

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